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パイオニアフィットネス業界を足掛かりに、世界進出を目指す女性起業家

2017.03.15

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フィットネス業界を足掛かりに、世界進出を目指す女性起業家
Omnify, Inc.は、フィットネス業界に特化したウェブサイトおよびモバイルアプリケーションの開発、運用を行い、中小規模のスポーツクラブやジムに予約システム、顧客管理機能、集客機能などを提供しているインドの企業です。

今回は、2015年3月にインド・バンガロールでOmnify, Inc.を立ち上げた女性起業家・Kabandi Saikiaさんにお話しを伺いました。

ターゲットは、フィットネス業界の中小零細企業

当社は、スポーツ・フィットネス業界に特化したSaaS(Software as a Service。必要なサービス・機能を、インターネット経由で利用できるアプリケーションの利用形態のこと)プラットフォームを中小零細企業に提供しています。このプラットフォーム上では、中小零細企業がECショップ機能や、会員登録、ウェブ請求書発行機能などを使って、自社のサービスを簡単に販売することが可能です。例えば、「会員を募集したい」というスポーツクラブやヨガインストラクターに、このプラットフォーム上にサービスを掲載していただくと、手軽にオンライン上での受け付けができるようになります。

情報入力するだけですぐにウェブサイト&アプリが完成する
簡単なサービス

このプラットフォームはクラウドで提供しており、会員登録とサービスの内容や利用時間、料金などの入力を済ませるだけで、あっという間に自社サイトが持てるようになります。また決済機能や自動SEO機能も付いているため、消費者はインターネット検索から顧客が登録したサービスへと辿り着き、予約から決済までスムーズに行うことができます。

 

当社は、ウェブサイトとモバイルアプリケーションに加え、SaaS型のビジネスアプリケーションも提供しています。アプリケーションはクライアントごとにカスタマイズするため、顧客にとって使い勝手が良く、連携ウィジェット(PCやスマートフォン、タブレットなどのホーム画面上に設置できる小型化されたアプリケーション)も含めて提供するので、既存のクライアント企業サイトとの連携も可能です。

機能を連携させることで、事業者の作業の効率化をサポート

当社の事業の優位性は、一つのプラットフォーム上に全ての機能が揃っているという点です。

 

テニススクールを運営しているような小規模事業者の場合、テニスを教えることに長けているからといって、ウェブを活用して集客したり請求や集金を行うといった、効率的な運営に長けているわけではありません。また、この業界で利用しているシステムは20~30年以上も前に作られたような古いものばかりで、事業者たちのニーズに追いついていないという背景もあります。古いシステムはとても複雑なため、専任の担当者をおいて、EC向けシステムやソーシャルマーケティング向けソフト、支払いはPayPalなど、複数のアプリケーションを導入する必要があります。その点、当社が提供しているのは全てのアプリケーションが連携している、とてもシンプルなプラットフォーム。更新や請求処理などの様々な業務が自動化できます。

 

2月に事業所を立ち上げたある顧客は、たった数ヶ月で事業所を4ヶ所にも増やしました。これができたのは当社のシステムによりコストが削減でき、請求の度に複数の請求先にSMSやメールを送信するといった事務的な手間がなくなったからです。全ての手続きが当社のプラットフォーム上で行えるため、顧客はテニスを教えることに集中できるようになりました。

ターゲットの絞り込みによって競合他社と差別化を図る

当社の競合は、ほとんどがアメリカの企業です。一つは、最近IPO(株式公開)をされたMINDBODY。企業価値は約10億ドルといわれています。その他にBookingBugや、小規模な事業者向けにマーケットプレイスを提供しているshopifyといった企業もあります。これらの企業と当社の事業の違いは、サービス事業者が使えるプラットフォームを提供している点です。

 

上記3社のなかでもMINDBODYは業界の先駆者と言える大企業で、幅広い製品を提供しています。ただ同社の製品は、多くの機能を持った包括的な製品で価格も高額なため、中小零細企業向きではありません。一方、当社の製品は中小零細企業が必要とする機能に絞って開発しているため、シンプルさが強みとなっています。

数ヶ月以内にウェルネス業界へ進出、さらに203カ国へエリア拡大

直近の目標は、数ヶ月以内にウェルネス業界に事業を展開することですが、ゆくゆくはあらゆるサービスで使えるプラットフォームにし、どんな人でも当社のプラットフォーム上でサービス事業がはじめられるようにしたいと考えています。現在18カ国で利用されていますが、1ヶ月以内に203カ国に対応できるように開発を進めており、世界のどこからでも利用できるようにする予定です。

広告は打たず、市場の理解や製品の最適化で顧客を獲得

当社はスタートアップのため、特に販促ツールを作ったり広告を出したりはしておらず、多くの時間をプラットフォームの開発に充てています。各地域のスポーツ・フィットネス業界の市場を理解することを重視し、そのうえで製品の開発に注力している点が当社の強みになっています。

 

さらに、開発チームが相当な時間を費やしてサーチエンジンの最適化やコンテンツの充実を図っています。毎日世界各地から3~4社の登録がありますが、これを増やして規模を拡大したいと考えており、インバウンドマーケティングやデジタルマーケティング、SEOなどにも取り組んでいきたいと考えています。

スピード感を持って進める、ローカライゼーション

現在は23種の通貨で取引ができますが、世界の誰もがどこからでも利用できるプラットフォームにするためには、ローカライゼーションも重要なポイントです。通貨以外にも、日本や中国、韓国、ヨーロッパなどでは現地語でのカスタマーサービスの提供といったサポートも必要になるでしょう。これについては3ヶ月以内に対応する予定です。

目的は「売る」ことではなく、顧客の「課題解決」

当社のコアバリューは、顧客の事業をサポートし、理想とする姿に近付けることです。私たちは物が売れれば良いわけではありません。当社が目指しているのは、顧客が抱える問題と真摯に向き合い、理解し、解決することです。顧客にとって本当に必要な機能を見極め、そこにフォーカスして開発するからこそ、スピーディーに製品を提供できるのです。

 

アプリケーションをカスタマイズして提供するだけではなく、顧客が必要とする機能を新たに開発することもあります。少人数のチームであることから物事を決めるのが速く、開発は数週間程度で行います。

100億の中少零細事業者をサポートし世界規模での発展を目指す

当社のビジョンは、100億社の中少零細企業をサポートすること。そのためには、彼らがデジタルを使いこなせるよう、環境やサービスを整備する必要があります。まずはニッチな市場から事業を始めましたが、将来的には世界に市場を広げ、顧客が事業の運営に足りないと感じる部分をサポートするプラットフォームとして、愛される製品となることを目指しています。

コンテンツの充実やSEO対策の強化が、今後の事業拡大の要

私たちの世代では、誰もがどこからでもインターネット上にあるコンテンツにアクセスできます。当社も、その環境を存分に活用してきたスタートアップだといえるでしょう。コンテンツの充実やSEO対策に取り組みさえすれば、特に販促費をかけずとも世界のどこからでも見つけてもらえるのです。今後もコンテンツの充実やSEO対策を強化し、さらなる事業の拡大を目指します。

パートナー企業との連携によって米国進出へ

世界各国での製品提供を目指す当社にとって、パートナー企業との連携は当然必要。現在アメリカの販売会社や開発会社などいくつかの企業と話を進めており、各社が持つシステムと当社のプラットフォームを連携させることを想定しています。例えば、ペイメントゲートウェイ事業(クレジットや電子マネーなどの決済サービス)を行う企業が当社のプラットフォームと連携して、製品を販売することなどが考えられます。

 

当社は開発部隊をアメリカに置いていないため、パートナーとの連携は大きな助けになります。そのため、パートナー企業とのレベニューシェア(事業の収益を、あらかじめ決めた配分率で分け合うこと)も用意しています。

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運命的な出合いによって起業家人生がスタート

Omnify, Inc.を起業したきっかけは、偶然の積み重ねです。もともと私は起業家を目指すようなタイプではなく、イギリスに住んでいた頃は銀行で働いていました。当時の私は、スタートアップの世界にはとても疎く、初めてアプリケーションを見た時も、それがイノベーションなのかどうかピンとこないくらいでした。その後、兄がいるアメリカへ渡り、シリコンバレーのスタートアップやビジネスエコシステムについて学びました。その際に、自分が使っている製品もそのようなスタートアップによって開発されたことを知り、初めて興味を持つようになったのです。インドに来てからは、積極的にスタートアップ企業に加わる機会を探すようになりました。幼い頃から、「何か自分でやりたい」という気持ちを持っていたのだと思います。Omnify, Inc.に出会った頃には、自然と自分も立ち上げに参画したいと思うようになっていました。

互いを支え合う関係がチームのコアバリュー

そういった経緯で起業に至ったのですが、創業者以外のチームメンバーは2年目に全て入れ替わっています。事業を開始した2013年当時は、今とは全く違った製品を開発していました。創業時のメンバーもとても良いチームではあったのですが自分たちが求めるものが開発できず、チームを一から組み直し、改めてOmnify, Inc.を設立することにしたのです。

 

共同創業者のManik Mehtaと私は、とても小さなオフィスで事業を始めました。事業開始当時は自分たちでオフィスを持つ資金がなく、メンターがオフィスの一部を借してくれるというので、そこで1年を過ごしました。始めはどうしたらいいかわからない状態でしたが、経験豊富な開発者が1人加わったことによって状況は一変。彼は4~5ヶ月で、今の全製品のプラットフォームを作り上げたのです。その間に、データベースを運営する企業との交渉や、ユーザーのペルソナ(企業が提供する製品・サービスにとって、もっとも重要で象徴的なユーザーモデル)作成、見込み客とのコミュニケーションなど、私も自分のやるべきことを進め、2015年に製品をリリースしました。6月には顧客が増え、要望などへの対応に忙しくなったため、さらに2人雇用しようと候補者34人の中からとても慎重に選出しました。私たちは長時間一緒に働くのですから、強固なチームになり、同じ認識を持って事業に取り組む必要があります。そのためには、チームの誰もがまず顧客を第一に考えて行動し、次にチームのメンバーがお互いのことを考え、支え合わなければなりません。誰かが具合が悪い時には、それが仕事であるかどうかに関わらず、その人のバックアップをします。これは、私たちのチームに共通するコアバリューです。

日々学びと刺激に溢れた起業家としての生活を満喫

企業に勤めることと自身で起業することの違いについて、人それぞれ考えはありますが、私はOmnify, Inc.での3年間の経験を通して、スタートアップでも成功できると信じるようになり、他の企業に勤めるという形で働こうとは思わなくなりました。スタートアップでは1日がとても早く感じられ、退屈することがありません。私は、窮地に陥った時こそ最高の仲間に出会い、時間がないなかでも最高の結果を得る、言わば「ピンチをチャンスに変える」ような運があると信じています。起業するまでは、自分がこんなに辛抱強い人間だとは思いもしなかったし、こんなに長時間働けるなんて考えてもみませんでした。起業したからこそ、そのことに気付いたのです。企業に勤めていると新しいことを学ぶ機会は限られてしまいますが、自分で起業すると日々新たなことをたくさん習得でき、現状に満足することもありません。

女性が起業し活躍するためには、決断と戦略が必要

インドで女性が活躍していくためには、もっと多くの女性が自身で起業したり、起業家とともに働くようになる必要があると考えています。これまで出会ってきた女性エンジニアは、とても優秀な方ばかりでした。女性はすばらしい経営者であり、事業を運営するうえで何をすべきかをよく知っているのです。

 

女性が起業をためらうのは、リスクに対して恐れを持っているからでしょう。私たちはワークライフバランスや失敗に対して、はじめる前に考えすぎているのです。人生を計画通りに進めるというのは不可能ですから、まずは動きだしてみることではないでしょうか。

 

一方、起業が目的となってしまっても本末転倒だと思います。事業は、アイデアを十分に醸成して、眠れないほど熟考したうえで開始するべきです。気軽に事業を始めたいのであればブログを書いて収入を得ることもできますし、それはそれで良いと思いますが、起業することと比べると全く別物です。私の周りにも成功している女性起業家はたくさんいますから、覚悟を決めて起業に取り組まれるのなら、その方もきっと成功されるだろうと思います。

 

 

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阪口 史保

阪口 史保 / Sakaguchi Shiho

フューチャーベンチャーキャピタル株式会社

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