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ノウハウベンチャー企業の成長のための「営業」

2017.03.14

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ベンチャー企業の成長のための「営業」

ベンチャー企業の経営の中での悩みはいろいろあるが、その中でも一番の悩みとして挙がることが多いのが売上が伸びない、ということだろう。戦略がなく敗れ去った国家や軍隊の話は歴史でもよく登場するが、ベンチャー企業の売上が伸び悩むのは、実はそれとは逆で戦略しかないことが原因であることが少なくない。私はそれを「戦略あって兵隊なし」と言っている。本当は「戦略あって実行なし」や「戦術なし」でも構わないのだが、分かりやすく「兵隊なし」としている。
 
今回は兵隊=実行策、その中でも最も重要なひとつである営業の必要性や基本的な考え方について触れてみたい。

ベンチャー企業経営者にありがちな勘違い

当社の製品は圧倒的な技術が元になっており、競争力がある(ので売れるはず)。
ターゲット顧客にヒアリングした結果、極めて評判が良かった(ので売れるはず)。
総合商社が販売代理店になってくれた(ので売れるはず)。
全国に代理店網を構築した(ので売れるはず)。
マーケティングは完璧である(ので売れるはず)。
当社の製品は競合他社の製品よりはるかに安い(ので売れるはず)。
他にも自社商品やサービスが売れるはずであるという理由をたくさん聞くことがあるが、これらは実は「営業」を知らないベンチャー企業経営者にありがちな勘違いだ。
 
もちろんこれらは製品やサービスが売れるためには必要なことではある。ただ、それだけでは足りない。そこには「営業」の機能が足りないもしくは存在しないのだ。
良い製品やサービスであれば顧客の方から探し出してくれるかのような勘違いも耳にすることが多いが、ほとんどの場合、営業活動を行わなければ顧客に知ってもらうことができず、結果として売上は伸びない。

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ベンチャーでの営業の位置付け

まずは、多くのベンチャー企業での営業の位置付けについて見てみよう。実は営業を軽視するベンチャー企業経営者は多い。ベンチャー企業経営者は、プログラマー、コンサル、技術者やマーケターなど様々な背景を持っているが、意外に少ないのが営業出身者。
そのため、たとえ営業部門が社内にあってもその役割は重視されていないことも多い。しかし、すでに商品やサービスが販売できる状態であるならば、営業を重視した社内体制を構築すべきだ。
 
マーケティングの究極の目的は、モノやサービスが「売れる」状態を作り出すことだが、それを実現できている企業は決して多くはない。それにモノやサービスは常に顧客の声を聞いて改良していく必要がある。今では顧客開発モデルなどの優れた手法もあるが、実際の販売開始以降は、顧客の声は営業部門に一番多く集まる。どんなビジネスでも「顧客」がスタートラインだ。
そこに一番近い場所にいる営業部門を重視しないことはありえない。
 
早速今から営業部門の位置付けについて考えてみて欲しい。

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まずは「直販」からはじめる

営業や営業部門の重要性を理解している場合、まずは「直販」と呼ばれる営業方法から開始することが望ましい。これはいわゆる「現場主義」の営業場面での体現だ。
直販を行うことは営業担当者がいなくても実施可能だ。営業は重要なものなのだから経営者自身が行うべきだ。
 
そこで知るべきは本当の顧客のニーズだけではなく、どうやったら顧客の感動を得られるか、どのような流れや方法で顧客の感動を得たか、だ。
実は直販を最初に行うべき理由はここにある。営業経験のない経営者が、自社の商品やサービスの販売を開始する際、いきなり代理店網を構築しようとすることがある。
はっきり言おう。それは成功する可能性が極めて低い。
 
営業代理店は一度契約すれば後は黙って商品やサービスを販売してくれる存在ではない。代理店となる企業はほとんどの場合、あなたの会社以外とも代理店契約を結んでいるのだ。そして、取り扱う商品やサービスは多岐にわたる。そういった中、代理店自身の利益を考えた場合、代理店は当然ながら、売りやすいもの、利益率が高いものを優先して販売していく。あなたは代理店に対し、自社の商品やサービスの販売を強化してもらえるよう働きかけるだろう。
そのときに重要になるのが、あなたの会社が直販で培ったノウハウなのだ。代理店に対しそのノウハウを提供していくことで、あなたの会社の商品やサービスは、代理店にとって売りやすいものとなっていく。こういった取り組みがあって初めて代理店網が活きてくる。代理店の活用は掛け算に似ている。
 
あなたの会社の営業力がゼロであれば、どんなに立派な代理店網を構築しても、掛け算した結果は変わらずゼロになるにすぎない。必ず、まずは直販からはじめよう。

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営業は仕組みづくり

営業活動を強化する際にありがちな間違いが、いわゆる「スーパー営業マン」を採用したり育てたりしようとすることだ。営業の世界にはそういった人達が少なくないし、そういった人達は尊敬すべき対象だ。だが、そういった人達の営業ノウハウはその人達にしかできないことが多い。営業活動はブラックボックスになりやすいと言われることもある。そのため、会社を継続的に成長させるためには、属人的な営業ではなく、組織的な営業を行う体制が望ましい。組織的な営業活動を行うために最低限必要となるのがたとえば次の機能だ。
 
営業のステップ化とKPI目標設定
KPI管理や営業力強化目的とした営業会議
インセンティブ制度
営業力強化の取り組み(教育)
 
KPIはいろいろ定義や使われ方があるが、ここでは「先行指数」として捉えたい。売上や利益を営業の管理指標にしているベンチャー企業が少なくはないが、売上利益は結果であって、それを管理しても営業の観点では意義に乏しい(もちろん経営の観点では重要だ)。売上利益をあげるための営業活動をステップ化し、それぞれのステップに目標となるKPIを設定しよう。分かりやすい例としては訪問数やキーパーソンへの提案数だ。そういったことを先行指数として管理していくことが営業の結果につながっていく。また、インセンティブ制度も重要だ。営業結果を出した担当者には何かしらのかたちできちんと報いる制度を作ることが営業力強化にもつながる。
 
ベンチャー企業での取締役会、経営会議そして営業会議でも、戦略に関する事項に議論が集中する場面を多々見てきた。しかし、結果を出していくベンチャー企業は必ず兵隊=実行策についてもしっかりと議論し仕組みを作っている。そして実効策の代表格のひとつが「営業」だ。私は営業なくして成長なし、と考える。本稿が起業家・経営者の皆様が営業について再度しっかりと考えるきっかけになれば幸いだ。

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石井 優 / Ishii Masaru

フューチャーベンチャーキャピタル株式会社 投資育成部長

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