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ノウハウ覚悟から考える起業、責任から考える資金調達(後編)

2017.02.22

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覚悟から考える起業、責任から考える資金調達(後編)

前編では、起業を「覚悟」というキーワードで考えた。後編では、資金調達を「責任」というキーワードで考えたい。

 

まず、資金調達はなぜ行うのだろうか? 直接的には、資金調達をしなければ事業を推進できない、会社を大きくできないなどの理由が挙げられる。間接的ではあるが、株主に著名人や有名企業に入ってもらい、会社の信用性を高める狙いもありえる。

 

さらには応用編として、経営に規律を設けるという意味もある。金融機関から借入をすると、契約に従って毎月返済や利払を行う必要がある。そのため、毎月しっかりと資金を用意できるよう、経営に規律が生まれるのだ。社内体制の整備といった側面もある。株主や債権者に対して経営の状況を説明するためには、会社の体制を整備して、社内の情報をしっかりと管理できるようになる必要がある。

 

それでは次に資金調達を行うために必要なことをいくつかご紹介しよう。

起業を考え始めたら貯金を始めよう

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あくまでも預貯金であって、株式などでの運用は含まない。そもそも、株式などのリスクのある金融商品は「余裕資金」、言い換えると、なくなっても困ることはない資金で行うものだ。起業のために使う、という目的がある以上、預貯金で行おう。起業の際によく言われるのが、起業の後、2年間全く売上が立たなくても暮らしていけるだけの資金を用意するか、起業前にまとまった量の仕事を受注しておく、ということだ。これはとても大切で、起業した後から営業活動を開始すると、毎日のように減り続ける通帳残高を見て焦りながら営業活動をする羽目になるため、良い結果を生むことができない。だからこそ、本来は起業前にいくつか受注確実な仕事を見つけておくことがベストではあるが、なかなかそうもいかないので、次善の策として貯金をしておくのだ。

 

また、自分で資金を用意するかどうかは、その後の資金調達にも大きく影響する。考えてみて欲しい。みなさんの知人が起業したとする。でもその知人自身はお金を出さず、周りの人にお金を出してくれと言っているのを見たらどう思うだろうか? 「まずは自分で出そうよ」と思う方が多いのではないだろうか。起業家自身が資金を用意することは、その起業家の覚悟の現れとも見られるのである。

資金調達を行う前に、自分の事業でのお金の流れを理解し、
予測できるようにしておこう

ここでは詳しくは説明しないが、利益が出たからといって、手元にお金が残るわけではない。利益が出ているのにお金が減ることもある。逆に、利益が出ていなくてもお金が手元にある限りは、会社は存続できる。

 

「黒字倒産」という言葉を聞いたことはないだろうか? 読んで字のごとく、利益は出ているのに、会社が倒産してしまうことを指す。これは経営者が自分の事業のお金の流れを理解していない、もしくは予測に失敗したことが理由で起きる。そんな会社には、金融機関や投資家も怖くて資金を出せないはずだ。また、お金の流れを予測できていないと、お金が足りなくなって慌てて資金調達を行うことになる。しかし、資金調達には一定の時間がかかる。また、自分が焦っていると、自分にとって不利な条件での資金調達という結果にもなりかねない。こういった話のときによくあるのが、会計や経理のことは全て顧問税理士に任せているので、自分は詳しくは分からない、という事例だ。しかし、任せていることと経営者自身が理解することは全く別の話だ。それに、会社を大きくしていきたいとお考えの場合は、会計や経理はできるだけ社内で行おう。その方がリアルタイムに資金や利益の状況を把握できるし、経営に活かすこともできる。

自分の事業や会社のステージ=段階を知ろう

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会社には、成長のステージ=段階がある。一般的には、シードやスタートアップ、ミドルステージ、レイターステージなどに分けられる。日本語でも、創業期、揺籃(ようらん)期、成長期、安定期などの言葉がある。

 

なぜそれを理解する必要があるかと言えば、ステージごとに適した資金調達の方法が異なるからだ。業種によってもマチマチなので一概には言えないが、起業したばかりの頃の資金調達に関する「3F」という有名な言葉がある。Founder(起業家自身)、Family(起業家の家族)、Friend(起業家の友人)からの資金調達が良い、というものだ。しかし、たまたまそれらの人が大金持ちでもない限り、事業を拡大するときに必要となる資金は準備できないだろう。だから、次のステージでは、金融機関や投資家などから資金を集め、さらにステージが進むと株式上場をして株式市場から広く資金を集めるようになるのだ。

事業に、再現性を持たせる仕組みを作ろう

再現性とは、わかりやすく言えば、成功の要因が分かっていて、それを別の機会にも一定以上の確率で実現できることを言う。球技で言えば、自分のシュートの成功率を高めるには、ゴールの左側から、このくらいの距離でシュートを打つ必要があると理解していること。そして、それを実行できることを意味する。「なぜホームランを打てるか分からない」と言っている野球選手と、「自分はこういう場面ではホームランを狙えるから、その場面では積極的に狙っていく」と言っている野球選手、どちらをスカウトしたいと思うだろうか? スポーツでも決して簡単なことではないが、事業においても実は難しいことだ。なぜお客様が自社の製品を選んで買ってくれるのかを正確に理解していない会社は少なくない。みなさんはそうならないよう、再現性を持った事業を行って欲しい。

集中すべきことを決めよう

集中すべきことを決める。言い換えると、「何をしないかを決める」ということだ。起業家の特徴にも色々あるが、多くの起業家に共通しているのは、「アイデアが豊富」という点。それ自体は素晴らしいが、一方ではマイナスに働き、「特定の事業に集中できない」とか、「すぐに諦めて他の事業に興味を持ってしまう」となりやすいのも事実だ。しかし、起業したての頃は、社内のあらゆる資源が不足している。人もお金も時間も足りないのだ。そういったときにあれもこれもやりたい、というわけにはいかない。資金提供者も、「経営が散漫になり、どの事業も結果がでない」という事態は望んでいない。常に選択と集中が必要であることを覚えておいて欲しい。

チームを作ろう

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会社は、様々な機能が一体となって運営されている。どんなに優秀な起業家でも、その全てを自分だけで行うことはできない。また、もしできたとしても、時間の制約がある以上、どれもいまいちな結果となってしまう。資金提供者も、起業家がスーパーマンであることを求めてはいない。むしろ、起業家自身の強みに集中し、それ以外のことはチームとして対応して欲しいと考えているし、そういったことができる会社の方を高く評価する。みなさんは優秀であっても万能ではない。ぜひチームとしてみんなの力を結集できるようになろう。

最後にもう一度、必要な資金調達かを考えよう

「お金は多ければ多いほどよい」という考えもあるが、それが当てはまる局面と、そうではない局面とがある。数年前に起きたリーマン・ショックの後、ベンチャーキャピタルの間では「キャッシュ・イズ・キング」という言葉がよく使われた。世界的に資金調達が難しくなっていたので、「チャンスがあれば、可能な限り多額の資金を調達しておこう。そうでないと、次の資金調達の機会はずっと先かもしれない」と考えてのことだ。逆に、資金調達環境が良い時期もある。今現在(2016年12月時点)もそういった時期だ。そのような時期には、ある程度の余裕を持たせるということは別としても、必要額をはるかに上回る資金を調達すべきではない。借入であれば利息がかさむという問題もあるし、もっと重大なこととしては、経営の規律が緩むという問題もある。資金調達をした直後、その資金を事業に使わず、高級車を購入してしまう経営者も残念なことに珍しくはない。資金調達の際には、常に、本当に必要な資金調達か考えるようにして欲しい。

 

さて、本記事の最後に、資金提供側の目線や考え方について整理したい。

 

起業間もない段階での資金提供側の視点は主にふたつだ。信頼に足る起業家がどうか、実現可能性や将来性のある事業計画かどうか。

 

まずは、信頼に足る起業家かどうかだが、起業家や経営者としての資質、人柄、初対面時の印象などが重要だ。事業がうまく行きだすと天狗になる起業家は、当然ながら信頼されない。逆に、うまく行っているときにこそ、次の手を考え実行していく起業家は高く評価される。貧すれば鈍するというが、事業が苦しくなってから、どうすればいいか、などと考えるのは実際には難しいのだ。そんなことを考える前に、今日を生き残ることで手一杯になってしまうからだ。経験豊富な資金提供者は、それぞれ独自の起業家評価ポイントを持っている。そういった方々との面談などの場で急に取り繕っても見抜かれてしまう。ぜひ、起業家や経営者のあるべき姿について、多く学んで、自分なりに考え、実践していって欲しい。そういったことを真面目に取り組んでいればきっと評価してくれる人に出会えるはずだ

 

次に、事業計画の実現可能性や将来性だが、実はそれを判断する際にもっとも重要な要素は、「誰が経営者であるか」なのだが、もちろんそれだけで良いわけではない。事業計画の作り方の勉強会に参加したり、自分なりに考えることによって、実現可能性や将来性を資金提供者に納得してもらえるよう努力を積み重ねよう。あと、必ず覚えておいて欲しいのは、事業計画は、資金提供者と起業家との間の大切な約束だということだ。起業家は事業計画を示し、それを達成するために努力をすることを説明して、資金を調達する。資金提供者は、事業計画を見て、それが達成されることを期待して資金を出す。事業計画を示して資金調達する以上、大きな責任が発生することは忘れないで欲しい。


 

本稿では最後にみなさんにふたつのことを伝えたいと思う。
 
ひとつめは、起業や事業を行うことを楽しんで欲しい、ということだ。本記事では「覚悟」や「責任」と、一見重たいキーワードが多かったが、それを上回る楽しさを起業や事業に見いだせる人こそが起業家なのだ。ワクワクすることが起業家にとっての最大のご褒美でありモチベーションの源だ。ぜひ起業や事業を楽しんで欲しい。
 
ふたつめは、「地域貢献のための起業」を最初から必ずしも考える必要はない、ということだ。もちろん、明確に地域貢献をしたいと考えている方を否定しているわけではない。すでに考えている方はとても素敵なことなので、ぜひ実行して欲しい。逆に地域貢献を具体的に考えてはいない方も、自信を持ってほしい。真っ当な事業でありさえすれば、それを真剣に行うことで自然と地域貢献ができるのだ。事業が大きくなれば、地域に雇用を産み、税金を納めることになる。それはとても立派な地域貢献なのだ。

 

 

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石井 優 / Ishii Masaru

フューチャーベンチャーキャピタル株式会社 投資育成部長

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