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ノウハウ良い経営者に必須の「考え方」とは? ~ベンチャーキャピタルが投資先を見極める視点~

2017.01.25

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良い経営者に必須の「考え方」とは? ~ベンチャーキャピタルが投資先を見極める視点~

ベンチャーキャピタルは、ベンチャー企業の“将来性”や“可能性”を評価して投資を行う。しかしベンチャーキャピタルの投資担当者も未来を予言する能力があるわけではなく、「成長しうるベンチャー企業」の資質を個別に、そして総合的に見ていくこととなる。今回はその判断基準のひとつであり、多くのベンチャーキャピタルが重視する「経営者の資質」とは何かを考えたい。すなわち、「ベンチャーキャピタルの考える良い経営者とは?」という問いへの答えにもなるだろう。

 

成長しうるベンチャー企業における、良い経営者像とは? 大きなビジョンや夢がある、経験豊富、若くて行動的、MBAホルダー、営業力がある、数字に強い……など、資格からスキルまで、挙げればキリがない。今回はテーマを絞り、経営者の資質としての「考え方」に焦点を当てる。

(1)夢が大きく、理想が高い

いくら経験豊富で、能力が高くとも、大きな夢や高い理想がなければ大きなことを成し遂げられない。吉田松陰の言葉を引用する。

 

夢なき者に理想なし、理想なき者に計画なし、計画なき者に実行なし、実行なき者に成功なし。故に、夢なき者に成功なし。

 

ベンチャー企業経営者や志しているみなさんには、これを「夢なきベンチャー企業経営者には成功なし」と読み替えていただきたい。ベンチャー企業経営者の考え方として、第一に挙げられるべき項目である。

(2)決断力がある

いくら大きな夢や高い理想があっても、貫き通す“強い心”がなければ成し遂げることはできない。では強い心とは何か? ここでは「決断力」と読み解きたい。

 

経営者が備えるべき決断力とは実は、「失敗を恐れない心」とも言い換えることができる。経営者にとって決断力が重要なのは言うまでもないが、ここで言う決断力は、「正しい決断を下す力」とは少し違う。まず「決断する力」があり、その上で「正しい決断を下す力」が活きるのだ。失敗を恐れる経営者は、「正しさ」を言い訳にして決断を下さない。そもそも自分が「失敗しない判断」をできると考えている時点で、それは傲慢にすぎない。正しい回答を探して立ち止まるよりも、意思決定を積極的に行う仮説検証・試行錯誤型の経営者こそ、良い経営者だ。それは歴史も証明している。もし失敗したら? 大丈夫、あきらめない限り失敗はない。

(3)自省する力がある

次に、「自省する力」を取り上げたい。自らの言動や行動を反省し、己の力不足を認めずして成長はありえない。まずは自分が「知らない」ことを知る。ソクラテスの「無知の知」、論語の「これを知るをこれを知るとなし、知らざるを知らざるとなせ。これ知るなり」など、繰り返し説かれてきた第一歩だ。

 

そして「うまくいったらみんなのおかげ、失敗したら自分のせい」を心得る。経営者自身を「褒めて伸ばす」のは甘えだ。成長しうるベンチャー企業の経営者は、自省する習慣を持っている。従業員に対してはぜひ、褒めて伸ばすを実践して欲しい。

(4)学びと実践を繰り返す

「実践主義者」と呼ばれる人がいる。机上で考えているだけで実際の行動に移せないのはたしかに良くないが、実践主義の人が陥りがちなのが、経験のみを重視しすぎる点だ。経営者には経験だけでは足りない。経営学と実際の経営は違うと考え、経営学をきちんと学ばない経営者も少なくないが、もったいない。

 

良い経営者は、学びと実践、その間を行ったり来たりして、自分が経験したことの本当の意味を知ったり、事前に得た知識をもとに経験をより充実させたりしている。

(5)考えの枠組みや軸を持っている

アニマルスピリットを持つ経営者だからか、野性的勘を発揮する経営者も多い。世の中、すべてが理屈で片付くわけではないので、鋭い勘も必要だろう。しかし、良い経営者は自分の勘も大切にしつつ、自分なりの考え方に“枠組み”や“軸”を持っている。判断に迷ったときに寄る辺となるものだ。

 

考えの枠組みや軸とは、経営関連書籍ではいわゆる「フレームワーク」として解説されている。「目標から遡って考える」、「趣旨から考える」、「原則と例外」、「正攻法と奇策の組み合わせ」、「選択と集中」、「論理と直感」など、経営の様々な場面で活用できる。

(6)したたかである

夢が大きく失敗を恐れず、自身を省みながら、勉強熱心で考え方に軸もある。実はこれでも良い経営者とはいえない。そこには「したたかさ」が足りないからだ。

 

良い経営者のしたたかさとは。まずは、「役割を演じられる」ことだ。素のままの自分が経営者に向いている、という人もいるだろう。しかしそれは極めて限られた人だけに言える。経営者は、すべてが思い通りにはいかない会社経営の中で、「経営者たるものこうあらねばならない」という考えの下に、その場に応じた役割を演じなければならない。次に「愛情深いが、冷酷にもなれる」二面性だ。綺麗ごとしか言えない経営者は成功しない。二面性という意味では、人に見せない「欲」も重要な原動力だ。夢だって欲のひとつと言える。したたかな経営者は表には出さない一面を持ち、そのこと自体が人間としての魅力を高めることにもつながっていたりする。


 

良い経営者の条件として、多くの場合、経験、知識、スキルや人脈などが挙げられるが、それらは必要条件であっても十分条件ではない。今回挙げたポイントは、捉えようによっては精神論的に聞こえるかもしれないが、これらの「考え方」が備わっていてはじめて、経験、知識、スキルや人脈が生きてくるのだ。

 

ベンチャーキャピタルの投資審査は通常3カ月程度という長い時間をかける。これは、単にビジネスモデルの審査をしているだけではなく、期間中に経営者の資質を見極めようとしているのだ。今回挙げたポイントはまだ一部であるかもしれないし、異なる考えを持ったベンチャーキャピタルの投資担当者もいるかもしれない。いずれにせよ、投資審査の際には、ビジネスモデルや数値計画の話ばかりではなく、経営者としての考え方が重視されるのは間違いない。

 

 

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石井 優 / Ishii Masaru

フューチャーベンチャーキャピタル株式会社 投資育成部長

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