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レポートNo Venture No Future【秋田県信用組合】

2017.02.13

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No Venture No Future【秋田県信用組合】
FVCが日ごろお世話になっている方々と対談し、ベンチャーの育成や新事業の開発など「いかにして事業を成功に導くか」をテーマに、対談相手の皆様の戦略等をはじめ、FVCの事業戦略なども併せてお話しさせていただくものです。
第5回のお相手は、秋田県信用組合様です。
平成27年、FVCと秋田県信用組合、全国信用協同組合連合会は総額2億円の「秋田元気創生ファンド」を設立。小水力発電事業者にリスクマネーを支援する「ターゲットファンド」に取り組みました。
今回、秋田県信用組合の北林理事長とFVC松本が対談。北林理事長の、地方創生と現場に対する熱い思いをお聞かせいただきました。

自然の中に、資源あり。
秋田県だからこそできることとは。

松本

飛行機から降りる時、風力発電の風車が見えました。
秋田県は風力発電所が多いのでしょうか?

 

北林
秋田県の風力ポテンシャルは日本で4番なんですよ。この風と太陽は、秋田の地域資源なんです。日本海側はどんよりしているイメージがありますが、太陽光発電は柔らかい光の方が発電効率が高いんです。例えば沖縄のように暑くなると、床や土が熱いので、機械の故障もあるし、発電効率も悪いんですね。

 

松本
なるほど。熱と光量はまた違うんですね。

 

北林
そうなんです。あと、山には森林がありますよね。そこには木質バイオマスというグリーンエネルギーがあります。
川もたくさんあるんですが、その水を使って、再生可能エネルギーの事業を興したいと考えている企業を見出しました。それでその企業の方にお話を聞いたら、将来の可能性が非常に大きい企業じゃないかと思ったんです。

 

松本
それが「東北小水力発電株式会社」ですか?

 

北林
そうです。
そこにはNASAで宇宙の流体解析を研究してきた若いエンジニアが3名おり、流体解析のシミュレーションを水流に応用して、効率のいいプロぺラを一生懸命研究しています。
秋田県は経済力が全国的にも非常に低いレベルにあり、これが人口減少に拍車をかけている要因のひとつではないかと思っています。彼らのようなベンチャーを見つけて育成し、地元企業として雇用を増やし、経済に大きな効果を与えていくという使命を我々は持っています。
そのうちのひとつがこの水資源で、国の政策に添ってこの再生可能エネルギーをビジネスとして興していくことでこの企業が成長するだろうと思い、プロパーとして融資に取り組んできました。
早稲田大学大学院の宮川和芳教授と技術連携の協定を交わす計画があり、そうすると毎年研究開発費が1000万、2000万とかかるんです。次に物を作った後は、山形県の芦野工業という東北で一番大きい発電事業所と技術開発研究の企業協定をこれから交わすというお話でした。大学院と企業、そのお二方との協定にも私が立ち会い、宮川教授にも何度もお話をうかがって、これは本物になる可能性が非常に高いと感じて、プロパーとして支援してきたという経緯があります。

 

松本
トップである北林理事長が一企業にそこまで携わるというのは、珍しいケースなんでしょうか。

 

北林
ただ融資をするのではなく、産業振興、地域経済の活性化に本気になって取り組んでいかない限り、企業は育たないと思うんです。
信用組合のお客様には内部留保が潤沢な企業はほとんどないので、まず先立つものとしてリスクマネーが必要です。
先ほど述べた事業は、ため池を利用して発電するという事業です。我々の先人が江戸時代、あるいはその前から「水を制する者は国を制する」とダムや池を作ってきた。その先人が作ったため池が、この国には相当数あります。秋田県内だけでも200か所ほどため池があり、そのうちの一か所、美郷町に次の春稼動するという計画です。私どもがここに2億5000万円の融資をつけてプロパーでやるという計画で進みましたが、そこでちょうど東日本大震災が起きました。
そのタイミングで全国信用協同組合連合会の仙台支店長さんに相談して、全国信用協同組合連合会の上の方々に繋いでいただき、連合会と共にこのファンドを組成しました。

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「すでにあるもの」を活かし、
電気を、雇用を、経済を生む仕組み作り。

松本
信用組合が作っていくファンドというのは比較的、1社あたり少額でたくさんの起業を促すような仕組みが多かったんですが、今回「東北小水力発電株式会社」1社だけに投資するファンドということで、画期的なことだったかと思いますが。

 

北林
あまり手広くすると虻蜂取らずになりかねないので、ターゲットファンドという考え方でこの1社をまずものにして、そして秋田に外からお金を運ぶ事業のモデルにしようという考え方です。実際、秋田県内には県営発電所が16か所もあって、それが黒字経営なんです。水力発電というのは儲かるもんだな、という感覚があります。

 

松本
県営の水力発電所が16か所もあるんですか!?

 

北林
そうなんです。地元企業にメンテナンスや新しい発注をまわしてほしいと、いくら国のお金とはいえ、そのお金は秋田県に落としてほしいと県の方にもお願いをしました。
ただ、地元企業では技術不足な部分があるので、「できるようになったら県から仕事発注しますよ」というお話をいただき、これはやはり地元企業を育て、秋田にきたお金は秋田に回るようにしたい。そういうことで、ターゲットファンドにしました。

 

松本
地方創生にはいろんな方法がありますが、地域に新しい産業を作るという意味で、この「東北小水力発電株式会社」に投資するというのは、地元に設備やメンテナンスなどの産業構造を作るという非常に面白い取り組みだと思っています。

 

北林
県外企業も必要ですが、地元資本の地元の企業人があまりにもいないから、商工会議所や商工会の会員も減る一方。この地域が衰退している状態に諦めムードがある。やがては、日本全体がそうなりかねないと思うんです。

 

松本
そういう意味では確かに、地域外から来る会社は来る時はいいけど出ていった時に大きな損害が出ますね。なので、電力に関して、この秋田県の資源を使って電気も雇用も生むというのは素晴らしい仕組みと思います。

 

北林
「東北小水力発電株式会社」は立派な名前ですが、小水力なので、50〜200キロワットという小規模発電が得意なんです。ということは、もし誰かがいい落差の水を見つけて、自分でやりたいということになれば、その方が事業主になるのも可能です。そういう事業主が秋田の中に点在するようになれば、お金が入ってくるわけですよね。そういう仕組みを作りたいんです。
秋田はあまりにも稼ぎ出す力がなさすぎます。一人ひとりがもっと稼いで、収入を多くしてあげなければと思います。
秋田の地方創生というのはまだ人任せで、地元の人自らがチャレンジしていかないといけない。信用組合の取引している小規模事業者や個人事業主が、そういう感覚でリスクを取って、私どもはファイナンス支援をいたしますので、やってくれる仲間を作っていきたいんですよ。
ですから、まず最初にこの「小水力発電株式会社」が地に足をつけて、納税をして、社会のために本当に役に立つ企業になるという仕組みを作らないといけないと思っています。

 

松本
それを地域金融機関のトップである理事長自らが動いて。「東北小水力発電株式会社」に対してもかなり関わられてますよね。営業もされているという風にお聞きしてます。

 

北林
しています。自らというとおこがましいですが、でも頭を下げようが何しようが、仕事取ってこないと秋田にお金が入ってこないですから。秋田が貧乏県なのは、皆働かない、稼がないから。皆公務員ばっかりになってどうするんですかと。

 

松本
ギリシャの二の舞ですよね。

 

北林
そうです。
例えばため池のマーケットだけでも大きいんです。
ただ、ため池を回って歩いて探して、土地改良区の同意を取ってやるのは、土地改良区の受益者の同意を取ったり、いろいろ大変なんですね。おかげさまで今は「東北小水力」にはたくさん仕事があります。本当は低コスト高効率の水車を、プロペラを作ることだけ特化してやってると楽なんですよ。でも、今楽な方に向かっているようではダメですって。

 

松本
ベンチャーはそれではだめだと。

 

北林
やはり初心を忘れちゃいけない、長靴をはいて現場を回りなさいと。私も長靴を履いて現場へ行ってるんですから。

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北林理事長が次に見据える、
バイオマス発電でモデル地域作り。

松本
今回、水力に関して産業が生まれようとしていますけれど、お話では次のファンドも考えていらっしゃるそうで。

 

北林
地域経済活性化ファンドも検討中ですが、同じくターゲットファンドをもうひとつ組成したいと考えています。
秋田には、先人方が手にまめし、額に汗し、次の世代のために残した森林があります。この森林のバイオマスチップを利用した超小型の発電機を普及させようと思っています。40キロワットの発電なので、それこそ小規模事業者がそういうビジネスを行うことで、事業主としての自覚が出てくると思うんです。
本業を持つ人に20年間、安定して収入のあるビジネスをひとつつかませて、その上で、自分の生き様、仕事のし様、暮らしぶりを考えてほしい。それを普及させるには、まずは各企業がしっかりとコンセプトを持ち、メーカーとして将来に迷惑がかからないような形を作らないといけませんよね。ですから、企業にも工場や建屋の取得、実証機を置くなど、お客様に見せられるモデル機をまずひとつ自分が持つということが重要と考えます。
秋田県25市町村全域という営業区域のうち、一番経済的に弱い地域が北秋田市と上小阿仁村です。ここに町組成の町包括連携協定まで首長にお話しして連携しました。協定に基づき地域の活性をしていこうと今進めています。その二地域に、日本初の超小型バイオマスのモデル地域として普及させたい。

 

松本
その超小型バイオマス発電というのは、技術的には今どの段階にあるんですか。

 

北林
機械は完璧なんです。国内でその分野の権威者にも顧問契約をしていただきました。その方にも素晴らしい、広めましょうとお墨付きをもらっています。
元は東京の企業なんですが、本社移転を打診し、北秋田市に工場を作っています。
機械はフィンランドの「ボルター社」という企業のものです。一昨年の夏ごろに「ボルター社」のヤルノ社長とエンジニアら4名がいらっしゃって、私が行政周りを案内しました。「ボルター社」には、独占販売権や代理店契約を求める企業が7社あったそうです。そのうちの1社が、今回私が引っ張ってきた企業だったんです。
なぜうちに決めたかというと、ヤルノ社長によるとその地域の責任のある行政が支援しようとしている雰囲気を感じたからだそうです。日本人は働きすぎで、民間企業が営利目的でするのは嫌だと。

 

松本
小規模のバイオマスで生んだエネルギーで本当に20年暮らせると実証できたら、事業者が増えて、事業者に対する初めの設備投資の資金を融資という形で支援できますしね。
ちなみに初期投資でいくらくらいかかるんですか。

 

北林
4000万で、年間の売り上げが1200万。それでも材料費はチップ代がかかりますので、差し引きで言うと、メンテナンス費用や借入金利等を考慮すれば、7-8年で全額返済できます。

 

松本
え!?
じゃあ年間で600万、700万くらいは残る。

 

北林
5、600万ですね。7〜8年で借金は終わる。
そうでなければ、例えば半分は自分の事業の補填として、残り半分は返済していくとなれば、14〜15年でローンは終わりますが、この電気というのは、永劫未来必要だと思うんですよ。
私はこのモデル地域を作りたいんです。最も生活に困っている、経済規模の弱い小阿仁村や北秋田市、引いては秋田県で豊かに暮らせるという姿を描ければ、県外に出ていった子どもも帰ってきます。そうすると人口は増える。
でもね、ずっと苦しい経営をしている人っていうのはなかなかそこに踏み切れないと思います。そこで、少数でもそういう実例をつくることによって、やろうとするだろうと。
1市1村がそういう地区になれば、他の町村も秋田県信用組合がやっているスキームを魅力に感じてもらえると思うんです。秋田県全体がそうなったら、県の豊かさも変わるはずなんです。
しかし、これには時間が必要です。そのためには、リスクマネーが必要。なのでこれも連合会にお願いをして、これが信組の一つのモデルになればですね、全国どこでも私が行ってしゃべりますので。これがうまくまわると、どこの信組も貸出金が増えますよ。20年間の売掛金を、自治体と担保すればいいんですから。しかしリスクがないわけではないので、行政がしっかりやらないといけないと思います。
地域を豊かにするには、大手企業にだけビジネスをさせて固定資産税をもらえばいいんじゃなくて、そこに住んでいる人が豊かになって、子どもも増えて。我々も信組マンとしてもっと本気になって産業振興や経済の活性化に取り組んで、一社一社が豊かになるという本能を呼び戻さないといけないんです。

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企業を育て、職員を育て、
地域全体の経済を育てるために。

松本
危機感がある中で、本当に自ら機会を作っていくことを推進されている北林理事長ってすごいなって思います。

 

北林
本当に地域を豊かにしないといけないじゃないですか。

 

松本
まさにベンチャーだと思いますよ。

 

北林
そうありたいし、職員にもそういう教育をしてもっと豊かになるようにしたい。このファンド、失敗させるわけにはいかないんです。何故かというと、連合会に理事長の英断でリスクマネーを1億円出していただいたわけです。この気持ちにしっかりお応えしないといけないので、特段「東北小水力発電株式会社」のファンドの行く末に今から危機感を持って対応しています。
なので長靴履いて現場を、ため池を回る。ここがはじまりだったわけですから。

 

松本
なるほど。

 

北林
今、田舎ベンチャービジネスクラブを作りまして、お客様を一人でも二人でも育成しようと取り組んでいます。
秋田県でも毎年「あきた起業家交流フェスタ」というイベントを催しています。前回は、事業家がどれほど悩み苦しみながら取り組んでいるのかを目の当たりにさせようと、このビジネスコンテストに職員8人を出席させました。これを見て一緒に泣き、喜びなさいと。
「レアーレ・ラボ」という企業は製法で国内と国際の特許を取って、ウメからエキスを抽出するビジネスに約3年ほど取り組んできています。この方に我々もリスクマネーを融資して、地域活性化ファンドをこういう企業にもぶつけていくように作りたいんです。
この方は女性経営者で、プロパーで応援しているのですが、今回グランドチャンピオンになったんです。こういう風に我々は女性起業家の発掘もやっていまして、芽が出てきてるんです。幅広く、女性も応援しています。
また、これまではトップセールス、トップダウンと皆トップに寄りかかる風になりつつあったんですが、これはよくないと思っています。今回このファンドを組んで、そして、事業性評価の仕方、もしくは経営者会議の在り方、出資した人の真剣な意見交換っていうのを多くの職員に参加させて勉強させています。お金を貸すだけじゃなくて、貸した後のお金がどのように生きていくのかを目の当たりにさせないと、生産性は上がりません。

 

松本
地域を元気にする、素晴らしいお話をありがとうございました。

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松本直人

松本直人 / Matsumoto Naoto

フューチャーベンチャーキャピタル株式会社 代表取締役社長

「産業がないなら作れば良い」。
地域金融機関のトップ自らが現場を見て判断し、とことん支援する。
その覚悟、発想力、実行力はまさにベンチャーを体現しており、心から感銘を受けました。
FVCもベンチャーキャピタルとして秋田県信用組合北林理事長の姿勢をどんどん取り入れていきたいと思います。

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