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レポートNo Venture No Future【秋田信用金庫】

2017.02.06

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No Venture No Future【秋田信用金庫】
FVCが日ごろお世話になっている方々と対談し、ベンチャーの育成や新事業の開発など「いかにして事業を成功に導くか」をテーマに、対談相手の皆様の戦略等をはじめ、FVCの事業戦略なども併せてお話しさせていただくものです。
第4回のお相手は、秋田信用金庫様です。
FVCをはじめ秋田周辺広域市町村圏の各自治体と共に平成27年、創業を目指す経営者や事業への情熱溢れる企業に対し、資金と経営支援で支える「あきた創業サポートファンド」を設立しました。
今回、秋田信用金庫の柴田専務理事とFVC松本が対談させていただきました。

地域の危機感をチャンスに。
その思いから、ファンドを設立。

松本
早速ですが、秋田県の経済状況について教えてください。

 

柴田
今回ファンドを手掛けた経緯のひとつでもありますが、秋田県内の経済が非常に疲弊している。全国的にもそうですが、特に秋田県の場合は人口減少率が全国1位なんです。高齢化率、それから土地の下落率も毎年全国1位です。そういう経済状況ですね。
人口が減るということは、経済が縮小するわけです。かつて信用金庫というのは地域の商店街に店舗を構え、小さな商店が主要な取引先でした。今は人口減少に加え、郊外型大型店ができて小さな商店が閉め、ほとんどシャッター通りになっています。我々の支店も商店街の衰退とともに廃店が増えています。そういった状況の中少しでも創業を増やしたい、という思いから、ファンド設立に至りました。

 

松本
今回の「あきた創業サポートファンド」設立の経緯についてお聞かせください。

 

柴田
経緯としてはそういった秋田県の経済的な背景があります。
平成24年に盛岡信金がファンドを立ち上げることになり、うちもやってみようということで、一昨年に盛岡信金へ視察に行き、話をうかがいました。盛岡も秋田県と同じように人口減少などの課題があり、特に震災復興といった要素もある。
秋田市役所の商工部長が友人にいるんですが、ちょうど視察したころ話題になった地方創生について情報交換する中で、具体的な施策があまりないという話になり、じゃあ一緒にこういう取り組みをしようよ、というのがとっかかりですね。

 

松本
今回秋田市だけでなく、さまざまな自治体に関わっていると思うんですが、それも金庫からの働きかけでそうなったんですか?

 

柴田
まず秋田市と連携することになり、それに従ってその他の自治体との連携もできてきた、という流れです。各自治体の議会を通さないといけないので、役所の担当者と会議を重ねてファンドの説明や設立のタイミングについて話し、議会を通していったという風な感じです。
その友人の商工部長は、議会では「何もしないリスクより、多少リスクがあったとしても何かをやった方がいいんじゃないか、前向きに考えよう」といった答弁をしていましたね。

 

松本
危機感が強ければ強いほど、ベンチャーは生まれやすいんです。少子化などさまざまな問題を抱える秋田県は、危機感という意味では全国でも一番ある所かなと思っています。そういう意味で「変わる」ことへの力が大きく働くのではないかと思います。ベンチャーには熱い情熱が本当に大事なので、危機感を持っている人たちがいるかいないかで、成果は大きく変わると思っています。

 

柴田
今回「あきた創業サポートファンド」から投資をしたとある社長さんがすごい情熱を持っていて、秋田にもこんな人がいるのかなと驚きました。
秋田県はいろんな経済指標が全国ワーストにも関わらず、県民、特に経済界の人たちの危機感があまり無くてですね。というのは、とりあえず食うには困らないだろう、みたいな県民性があるわけです。農業県ですからね。そういうゆっくりしているところがありますね。

 

松本
こういう取り組みには、いわゆるイノベーションが起こる「よそ者、若者、バカ者」という力も使うべきかなと思います。
まさにその創業ファンドから投資した、情熱を持つ方もどんどん巻き込んでいけたら。県内で危機感が醸成されないんだったら、他ももっと巻き込んで、いろんな目線で見てもらう。そういう意味では、地域間連携も推進していけたらいいなと思っています。

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他機関との連携を強化し、
支援の手を拡げたいという願い。

柴田
そういう意味でひとつ、ファンドを立ち上げてからの問題点みたいなのもあると思います。
これまで投資をした5社は、すべてうちの支店のネットワークを通じてなんです。自治体からは出資してもらい、その他のいろんな起業・創業を手掛けている県の活性化センターや商工会議所、大学などとも今回連携したんですが、そういうところからの紹介案件はありませんでした。
我々の力不足の面もあるかと思うんですが、いろんなところでいろんなことをやっているのを我々を通して一本にまとまって、盛り上がりながら一緒にやっていこうと考えていた部分がまだできていないというのが課題です。

 

松本
大阪でも今ファンドを作っていまして、大阪府や大阪市がベンチャーの認定事業をやっていて、ピッチコンテストなどを催しているんです。そこで、認定はしたけど結局行政からお金を出せるわけじゃないので、皆の前で発表させることしかできません、という風になっているんです。
そういった事業に対して、今回のファンドってすごく相性が良くて、本当にそういうお金を必要としているところにリスクマネーを供給できるという意味では、WIN-WIN関係のはずなんですけどね。

 

柴田
今のところ、こちら側から働きかけて、いろんな起業・創業関係の会議にも出させてもらうなどして当庫の方でいろいろ手は尽くしているんですけども。その辺がちょっと課題ですね。

 

松本
ビジネスプランコンテストが行われたそうですが、その受賞企業に投資という実績はまだないんででしょうか。

 

柴田
すでに投資した企業「ホワイトシード」さんが、再度新しい提案をして準グランプリを受賞しました。彼らの洗車の技術を動画で発信してネット通販の拡販を狙っていて、それを他の業種にもやりましょうとプレゼンしたんです。それが準グランプリ。本業から派生したモデルです。
我々が関係する企業は今回が初めてですが、事業化に向いているというのがこれまであまりなかったんです。今回グランプリをとった方が今、いろいろと推進してますね。

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職員の「目利き力」を養い、
目指すは「足で稼ぐ金融機関」。

松本
ファンドを組成した目的について教えてください。
 
柴田
県内経済への貢献への思いも話しましたが、実はもう一つ重要な目的があります。それは、金融機関の職員の教育、という面です。
我々金融機関の職員は、例えば融資を審査する際でも財務諸表とか事業計画を見て審査するんです。そういったものに対してケチをつけるのが非常に上手いわけです。しかし、逆に自分で事業計画を立てるということがないので、単に指摘をしているとか、ケチをつけるだけで終わっているケースが非常に多いわけです。
本来の、今求められている「目利き」は深く企業に入っていかないと分からないことが多い中、ファンドは間接的にでも経営に参画するわけですから、経営会議などにはオブザーバーとして参加します。そういった部分が非常に職員の勉強になると思っています。あるいは投資案件を発掘する際に必要な観点も、非常に勉強になると思っています。
 
松本
もともとベンチャーは足りないものだらけなので、ケチつけようと思ったらいくらでもケチをつけられます。
じゃあ最低限どうしたらこの会社が投資できるレベルまで上がるのか、一緒に考え提案します。例えば財務諸表が出てこないんだったら作るお手伝いをしたり、売り上げの実績がないなら業者を紹介するなど、投資する前にハンズオンという形で支援します。それで、実際に投資できる水準まで上げる、みたいな感じで。もっと言えば、創業ファンドだったら出してからでも、それができますしね。
 
柴田
うちで8800万出資してますが、それで儲けようなんて考えはサラサラなくて、職員の研修費だと思えばいいと思っています。
 
松本
我々もどんな企業に支援するべきかがいつも議論になるんですが、創業ファンドに取り組み続けて実感しているのは、大事なのは人の共感というところですね。
たとえ製品がまだできていなくても、共感・感動を生めばいろいろな人が手伝ってくれたり、場合によってはタダでも自分が中に入って営業するよとか、いろんな人を巻き込んでいける。
サービス自体も、本当に感動のサービスだったら付加価値をつけて売れるので、いかにいろんな人の共感・感動を生むか、というポイントで見ていくと、本当にまだまだ投資できるところはいっぱいあるなというのは実感します。
続いて、ファンド組成の効果についてお話をうかがってもいいですか?
 
柴田
今、インターネット銀行やクラウドファンディング、フィンテックなど新しい金融の形がいろいろ出てきている中、我々信用金庫はあくまでもフェイス・トゥ・フェイス、対面取引が基本です。今の平野敬悦理事長が就任してからの経営方針として「足で稼ぐ金融機関を目指そう」ということを掲げています。まさにファンドの取り組みはその方針に通じており、そういった意識付けが醸成されると思います。その辺も非常に効果があると思っていますね。
 
松本
ちなみに今どれくらいの行員さんがこのファンドに携わっていますか?
 
柴田
秋田信金18支店のうち、16店舗の支店長と役席で合わせて30人超が関わっています。ファンドについての研修を受けたのは係長クラスまで。今のところ直接は関わっていないんですが、ファンドを推進するという意識は相当な人数が持っています。

熱い思いの経営者を見出し、
どんどん拡げたいファンドの輪。

柴田
お酒の席で経営者の方からプレゼンを受けたりすると、秋田の若い社長はやる気に満ちて、こういう人もいるんだな、ということを改めて我々も感じて、良かったと思っていますね。
 
松本
一般的にはリタイヤした方が創業するというのが増えている中、秋田では30代40代の経営者が多い。これは私も驚きでした。
しかも、やっていることが面白いじゃないですか。ちなみに専務は、どの企業が印象に残っていますか?
 
柴田
印象に残っているのはやはり「西明寺栗」を使用した菓子の開発をした「ゆう幸」さんです。あと、さっき言った「ホワイトシード」の社長とかね。この間投資した軽自動車のキャンピングカーも、なかなかいいなと思っています。
今は全5社で止まってしまっていますが、今年度下期も5社ぐらいを目標にしています。
昨年度が4社だったので、今年度の1社にプラス4で年間5社を目指しています。
 
松本
ファンドは、ああいうところでも投資を受けられるんだと認知されたり、経営者の横の繋がりで広がっていったりするので、初めはちょっと時間かかるんですけど増えてくると後は結構スムーズにいくと思いますね。
 
柴田
あと、我々はこれまで自治体との繋がりがやや薄かったんです。預金の受け入れや起債の引き受けはありましたが、担当者同士が話をするという場面があまりありませんでした。ただ、ファンドを通じて、担当者と会議を持つなど自治体と関係がより密接になれたというのも効果のひとつですね。
 
松本
どんどん自治体からも推薦してもらえるような関係を、今後どう作っていくかですよね。
 
柴田
そうですね。今後の課題ですね。課題は他にもうひとつあります。
今回、投資案件を発掘するにあたって、経営者は投資を受けたいと思っているのに他の株主や担当税理士らが必要ないと反対して、結局投資ができなかった企業先もあるんです。そういった顧問税理士や株主に対しての説明、その前段として、その経営者に対する我々の説明がちょっと不足していたのかも知れないですね。
 
松本
今回のファンドの特徴でいくと、経営権に関しては議決権、つまり経営権を取らないという形で配慮できるのはおそらく他のファンドでは前例がないと思うので、そこをしっかりご理解いただくということですね。
そしてもうひとつは、融資とは違うという点ですね。会社が儲かって初めてファンドも回収できるという形なので、損がどんどん膨らんでいったり、累積損失が残っていると株自体を買い取る必要はない、ということが法的にちゃんと担保されていますよ、ということがもう少し上手く説明できると安心感を持っていただけると思います。

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秋田の資源を世界に発信すべく
現場主義でノウハウをゲット

松本
今後のファンド運営やFVCに対する期待はありますか?
 
柴田
FVCさんに対する期待というか要望はあります。
ファンド設立の際に一番懸案だったのは、自治体からの出資という部分もあったんですが、ファンド運営会社は県内にはなくて、FVCさんが岩手県の事務所からわざわざ秋田まで来て運営してくれるのかどうか、運営したとしても相当手数料が高いのでないかというのがありました。
ですが、やってくれるということと、やはりFVCさんについては他の一般的なファンドと違って、地域での活動も重視していこうという姿勢がありましたから、そこを評価して運営会社として選ばせていただいたんです。ところが、一昨年でしたか、青森と山形から事務所を撤退されて。あと東北で残っているのは盛岡……というので、これ以上撤退しないかという心配ですね。ぜひ東北にも根ざしてほしいという思いがあります。
そういえばアメリカ現地法人も立ち上げられたとか。
 
松本
アメリカに子会社を昨年10月22日に設立しました。
まさに地方地域のお客さんについて、最近グローカルという言葉があるように、マーケットとして東京だけではなくいきなりアメリカや今後はアジアというマーケットに繋いでいくという橋渡しをどんどんしたくて。
なので、むしろ秋田の競争力を高めるためにも、海外という市場が必要だなと思っています。
 
柴田
きっかけはそういう事業のためにアメリカで立ち上げたのですか?
 
松本
そうです。
海外ベンチャーと取り組みたいという大企業が多く、それなら大企業とアメリカのベンチャー企業を繋ごうと思いました。そこでベンチャー企業との付き合い方やオープンイノベーションの繋ぎ方を大企業に経験してもらい、次に国内ベンチャー企業と大企業が協業できる形を作っていきたいというのがあります。
特に日本の場合、地方大学に本当にいいシーズが眠っているので、そういったものをアメリカとの経験を踏まえて推進してもらいたいなと思っております。
そういう意味ではもちろん、現場にもっと根ざしていきたいという思いも当然あります。
とはいえ、FVCだけがそのノウハウをずっと持っていても仕方がないとも思っていまして、最終的には秋田信金の行員さんにも知ってもらって、皆さんでベンチャー投資ができるような仕組みを作りたいですね。
 
柴田
それは我々も非常に重要だと思っています。
現場主義ということを言われてますので、我々もまさしくそのノウハウをぜひもっといろんな場面を通じて得ていけたら。
 
松本
もう全部吸い取ってもらえたらと思っています。
あとは、販売のネットワークなど地域だけでは足りない部分に関して、やっぱり全国のネットワークをどんどん繋いで生まれる部分が出てくるので、そういったものに我々は注力させてもらえたらなと思います。「よそ者若者バカ者」をどんどん連れてきますので。

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松本直人

松本直人 / Matsumoto Naoto

フューチャーベンチャーキャピタル株式会社 代表取締役社長

危機あるところにベンチャーあり。
人口減少が著しい地方でも若い世代のスタートアップが育つということを、秋田信用金庫柴田様との対談を通して確信しました。
また、たくさんの職員が投資に関わることで、事業性評価の人材育成も兼ねるという取り組みは、単にファンドの運営をベンチャーキャピタルに任せるのではなく、地域の金融機関としてサスティナブルな取り組みであると再確認しました。
FVCも今後、勉強会などを通して人材育成に積極貢献していきたいと思います。

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