100年企業はここから生まれる。 Future Venture JAPAN

レポートNo Venture No Future【CSV開発機構】

2017.01.18

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No Venture No Future【CSV開発機構】
FVCが日ごろお世話になっている方々と対談し、ベンチャーの育成や新事業の開発など「いかにして事業を成功に導くか」をテーマに、対談相手の皆様の戦略等をはじめ、FVCの事業戦略なども併せてお話しさせていただくものです。
第3回のお相手は、シェアード・バリュー〜共有価値〜の創造をテーマに、企業のマッチングや産官学連携を通しての事業創造、あるいは社会課題の解決などに取り組んでいる一般社団法人CSV開発機構様です。
FVCも会員として参画しているCSV開発機構様で専務理事を務めていらっしゃる小寺徹様とFVC松本が対談させていただきました。

社会課題解決のために、CSV開発機構は生まれた。

松本
はじめに、CSV開発機構の成り立ちについてお聞かせください。

 

小寺
CSV、Creating Shared Valueつまり「共有価値の創造」の考え方自体は、2011年にアメリカの経営学者マイケル・ポーターが提唱しました。
当時私は旅行会社に勤務しており、様々な企業とお付き合いをしていました。新しいビジネスを模索する中で総務や広報、CSR等で新しい分野の仕事を探している時に、CSRは業績で左右されることが多く、様々なCSR関係の方から予算不足等でイベントができなくなったというような話を聞きました。しかし社会貢献の志を持った方は沢山いらっしゃったので「会社同士を結び付けたら仕事になるのでは」というのが肌感覚としてありました。
当時、赤池学・現理事長と出会って「それってCSVっていうんじゃないの?」という話になり、1年ぐらいかけて自分なりに勉強して、2012年1月に想いを持つ7社で任意団体「CSVサーベイランス研究会」を立ち上げたのが最初です。

 

松本
当時、小寺さんの思いと他の方の思いが共感してできたんですね。
はじめは勉強会をされたんでしょうか?

 

小寺
最初は小さな会議室の勉強会からスタートしました。
はじめはそもそも社会課題が何かというのが、分かっているようで分からなかったのです。立ち上げ準備をしていた2011年というのはまさに3・11があった年で、災害当初は企業が緊急復旧などに人・物・金を投入していたけれど、年末ぐらいの復旧期になると次に何をするべきかというフェーズになりました。東北とひとくくりにされている中、被害の比較的少なかった青森、秋田、山形の状況はどうなのかという話になり、では青森県の方に講演をしてもらおうとなり、それが1月・第1回目の勉強会です。現在青森県観光国際戦略局長をされている高坂局長に第1回目の講師をお願いしました。2月はコンパクトシティに取り組んできた富山市の森雅志市長に、3月には水素のまちづくりをしている北九州市の松岡環境局長お越しいただき、抱えている本当の課題とは何かについてお話をうかがいました。2012年の夏から秋にかけてはそれぞれ3市に視察団を出して、実際の取り組みを見学しました。
活動を進めていく中で、任意団体のままではやりにくいことも出てきたため、2014年4月に一般社団法人を取得し、現在の「CSV開発機構」となりました。

 

松本
「CSV」というキーワードを使おう、中心に据えよう、というのは当時からみなさんの共通認識としてあったのでしょうか?

 

小寺
そうですね。正直、名称にこだわっているわけではないんですが、日本の企業はそもそも社会に役立つために誕生していることが多いので、こういう概念をきちんと持っていようという意識はあります。
我々としては、課題や問題を企業の事業力で解決していくという柱はブレさせることなくやっていこうと考えています。

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多彩な企業のマッチングで社会を変える、日本を変える。

松本
社会問題、あるいは地域課題を深掘りして、見えてきた問題をどう解決していくか、どこから着手するのか、自分たちで課題にどう対応できるのか、という次のフェーズに入っていくなかで、CSV開発機構さんとして持っていた課題というのは何かありましたか?

 

小寺
お陰さまで特別会員を含めて会員企業は40社近くあり、さまざまな業界・業種のトップ企業ばかりなので、様々な課題に対応できるという強みは持っていると思います、各社の強みを生かし頼れるところに頼ればいい、企業の事業力をどのように生かすのかということを常に考えています。
社会問題については、少子化や高齢化、あるいは環境問題に関して、対応できる会社もあればできない会社もある、直球で勝負できる業界業種か、直接は関係しないものの遠回りでも解決できるのか等、関わり方も違います。
当初は「社会課題とはこれだ」という特化したテーマを作る方がいいかと考えていましたが、現在の社会課題は複雑化・高度化しているので、テーマを定めても簡単に解決しないと思います。
具体的には省庁・自治体・企業などから、課題・問題は多数投げかけをいただいています。それらを会員企業と協働して、できることからやるという感じです。
ただ、何でもかんでも思いつきでやるわけではなく、大事にしたい思いは、立ち上げ時に赤池理事長と話していた「日本を変えようぜ」の一言なんです。いかに課題を昇華させ、多くの企業が参画するビジネスにするかが課題だと考えています。
国の力が弱体化している今、我々のような企業群が民の力で、官の協力も得つつ、きれいごとを抜きにしても日本を変えていこうという意識で動いてきたというのが実感ですね。

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金融の力を取り入れて、さらに先のフィールドへ。

松本
FVCは今年、正式にCSV開発機構に入会させていただきました。
課題に対しての解決に向けて、ある程度グランドデザインが描けた段階で人・物・金・情報・リソースなどをそれぞれ出し合うと思うのですが、我々が加入させていただいたのは、まさにベンチャーキャピタルとしてリスクマネーを供給するという立場になれるんじゃないかと思ったのがメインです。
もうひとつはアントレプレナーをこれまで育ててきた実績からそういった人を集められる機能が我々にあるんじゃないかと思っているのですが、これまでCSV開発機構としてそういう機能はピースとしてあったのでしょうか。

 

小寺
ありませんでしたね。
やはり、我々が一番苦労しているのが資金面というのは事実です。
現実は課題の解決や事業を起こすにはお金が必要で、企業もすぐに投資できるわけではないので、だとするとある程度自由に使えるお金というのは補助金や助成金になってしまうんです。でも我々は税金ビジネスをしたいわけではなく、金の切れ目が縁の切れ目になってしまうならしたくないというのがもともとCSV団体を作ったきっかけなので、FVCさんの加入は歓迎でした。
そういった資金面で悩んでいる時にご紹介いただいて「お金の心配はしなくていいです。その代わり、事業の目利きについては会員企業でちゃんと見てくださいね」と言われた時に、こういうやり方があるのか、なるほどと思いました。
我々は4年ほど前から、CSVの理念を学ぶことで地方自治体・地域の企業と首都圏の企業や大学を結び、地方の資源を磨き上げ、開発するビジネスモデルの提案を「CSV大学」という名称で取り組んでいます。青森県弘前市がその第1号なのです。補助金などの使えるお金が出てから一回はビジネスのきっかけを作れるけど、そこから一歩踏み出す資金がない。その先がファンドという形になるんだなと思いました。
そうなると、言いたいことだけ言ってやらない人の「金がないから無理だ」という言い訳を、金融の力を結びつけることで追い込めるようになる。その辺にFVCさんが入った強みというのはあると思います。

 

松本
あともうひとつ、「誰がやるか」となった時に、複数の企業でジョイントベンチャーを作るということもあるかも知れませんが、その旗振り役というのはどういう方がこれまでなさってきたのでしょうか。

 

小寺
基本的にはその地域で事業をしている方ですよね。
例えば今回の弘前市とのりんごのプロジェクトだったら、農家やりんご産業に関係する人が主役にならないといけないと思います。
企業側はうまく地元の人の協力を得たいというのもあるし、地元の人側は足りなかったノウハウや人材、資金の部分ってほんのちょっとだったりするので、そこを我々が見定めて結びつけられたら。
自分で事業していると分かりますけど、足りないのはあと数十万、数百万っていうことはたくさんあるじゃないですか。借りたいけど貸してくれるかどうか、みたいなところも含めて、我々のような事業体が手伝えるなら、いくらでも地方で仕事が創出できるのではないかという思いがあります。
地元事業者がきっちり儲けてもらうところと大手企業が儲ける部分っていうのは多分明確に違うので、レイヤーをきちんと分けて、ここを新たなモデルにして集積していくと、我々のなかでさらにビジネスチャンスが出てくるはずなので、これを積み立てているのが今の状況です。

 

松本
CSV開発機構さんがこれまで続いてきた、そしてこれからも発展していける可能性を秘めているというのは、本当にそこに関わる人たちの思いと能力というか、性格というか、そういうところで成り立っているという感じがします。

 

小寺
そうですね。うちの理事や会員は、比較的変わっている人が多いと思います。
というのも、ブルーオーシャン戦略というのではなく、競合相手のいないブルーオーシャン自体を創出するような、大きな違う視点で見ている方が多いと感じます。

 

松本
市場の創造ですね。

 

小寺
そうそう、そうすると海さえ作れば魚の種類から入場料から何かしら仕事ができますからね。

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人の輪どんどん広がる、「りんご産業イノベーション」プロジェクト。

松本
先ほど出た、青森県弘前市のりんごのプロジェクトについてお話をうかがってもよろしいですか?

 

小寺
会として最初の勉強会で青森の方に講演していただいた時に、当時の知事から弘前の視察を勧められ、そしたらやりたいけどできなかったこととか、やってみたけどうまくいかなかったこととかいろいろ出てきて、地元の方と東京の企業、行政も一緒になって60人ぐらいの勉強会を1年ぐらい繰り広げていたんです。そうすると、3分野9事業が洗い出されてきた、「食のブランド化」をしてほしいという強い要望が市長から出され、第1号ビジネスとして「白神めぐみ寿司」が誕生しました。これは、単純に美味しいものを作ろうというのではなく、津軽塗りなど津軽の伝統文化を体感いただき、弘前にわざわざ食べに行くという新しい食デザインを創出しました。首都圏でのプロモーションでは4万食を超える津軽の食材を提供することができ、また北海道新幹線開通もあったことで、秋だけで弘前に1千名を超える方が白神めぐみ寿司を召し上がりにいらっしゃいました。
りんご産業ですが、弘前市では少子高齢化、後継者不足などで10年後にはりんご農家が半分に減少し、それに伴って現在の年間りんご販売額400億円超も半減すると、弘前市では想定しています。市の存亡にかかわる事態に陥る可能性が高いということです。それを防ぐためには本当にりんご産業に必要なものは何か、機械化なのか、流通の改革なのか、商品のマーケティングなのか等1年ぐらいかけて議論を重ねて、ようやくグランドデザインを作りましょう、というのが今現在の段階です。
最終的な目標としては、販売額400億円を維持した上でプラス100億円のりんごに関するマーケットを作るというのを弘前市との共通目標に設定しました。
農家の皆さんにちゃんとりんご生産を続けていただかないといけないですし、大規模な園地を耕作するためには人材育成も急務です。弘前市が日本一のりんご作りの技術を持っているなら、その技術を弘前以外でも教えればいいんです。日本のりんごの産量は全世界の1%なので、ニッチなマーケットはあるとしても、世界目線ではまだまだこれからです世界最高技術を輸出するというのもありです。弘前りんご公園を、世界中のりんごの技術が集まるりんごの聖地にしましょうとか、弘前市に人が集まる大義を作る。そんな、人材育成とかマーケティングなど4つのマトリクスを組んだ16のビジネスの素案を提案しています。

 

松本
まさにその16のマトリクスのビジネスモデルを、本当に儲けられる、持続性のある形にしていくという検討をこれからしていくんですか?

 

小寺
そうですね。
我々が素案を出した16のビジネスについて、内容や順番について、議論を進め、年度末にアクションプランとして提出することになっています。
産地表示は県単位なので実は弘前りんごという売り方はしていません。青森りんご、という県単位の売り方なんです。だったら、弘前りんごという売り方をちゃんとして、その価値を可視化しようというのも狙いにあります。例えば首都圏のいいレストラン等で弘前のりんごが使われているというのであればりんごづくりの面白さや大変さをストーリー化すれば、必ず誰かが記事にしてくれます。何かが動き出すきっかけは非常に小さいですが、動き出すと「自分も仲間に入りたい」という方がたくさん出てくる。だから、NDAがらみのことは別として、基本的に隠すことをしないで色々な方に話します。そうすると何でこの分野の方が?と思うことがあっても「うちはこれができます、あれもできます」というのが結構あるので、このプロジェクトは広がりが無限にあると感じています。

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目指すは日本初のCSVファンド設立。

松本
今お話を聞いたことを含めて、ビジネスの鉄則というか作り方というか、まさにそれがCSV開発機構には全部入っている気がします。
ビジネスがうまくいくためには世の中に必要な事業を作ることが重要で、その意味で社会問題の課題を解決するサービスを、オープンイノベーションを用いてビジネスモデルを構築し、そこで生まれた事業に必要なリスクマネーを供給する。
そのようなエコシステムがCSVの考え方を中心として生まれるべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか?

 

小寺
そうですね。それは理想であると共に、ひとつでもモデルケースができれば実現できる可能性が高くなると思います。
大手事業会社が新規事業を起こすためには、CSVの考え方が必要不可欠という状況になりつつありますし、そこにリスクマネーを供給できる仕組みをFVCさんが提供してくれれば、日本初の取り組みになるのではないでしょうか。

 

松本
ぜひやりましょう!

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松本直人

松本直人 / Matsumoto Naoto

フューチャーベンチャーキャピタル株式会社 代表取締役社長

今回、多くの可能性を秘めたCSVの概念、そしてCSV開発機構様の取り組みについてうかがって、今後、CSVが経営戦略のスタンダードになるという確信を得ることができました。
CSVにおいては「どれだけ人の共感を集められるか」が競争力の源泉となります。強い思いを持った人の集団であるCSV開発機構の持つパワーは、本当に日本を変えていく原動力になるかも知れません。
FVCとしても今後、CSVファンドの設立を通じて、持続的社会の実現に尽力していきたいと思います。

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