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レポート起業家や企業がいま注目すべき都市・コロラド。その魅力が語られた「FVC Colorado Innovation2017」レポート

2017.01.04

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起業家や企業がいま注目すべき都市・コロラド。その魅力が語られた「FVC Colorado Innovation2017」レポート

フューチャーベンチャーキャピタル株式会社(以下FVC)による講演会「FVC Colorado Innovation 2017」が2016年11月末に京都、12月初旬に東京にて開催されました。今回のイベントでは、アメリカで最も歴史のあるエンジェル投資ネットワーク・Rockies Venture Club (以下RVC)のエグゼクティブディレクター・Peter Adams氏(ピーター・アダムス、以下ピーター氏)が来日するとあって、アメリカ進出を目指す企業や自治体、金融機関などが多数参加し、会場は熱気に包まれました。

 

2016年10月、FVCはアメリカ・コロラド州に現地法人「FVC Americas」を立ち上げ、コロラド州フォートコリンズ市との「経済発展と起業家の支援に関わる相互協力の共同宣言」を発表。先述のRVCと提携した新ファンド「Rockies Venture Fund」の設立も進めており、アメリカ進出を考える日本国内の企業や金融機関を支援する環境が徐々に整いつつあります。そこで今回、ピーター氏を迎えて現地の投資トレンドや、日本から進出する企業への支援状況についてリアルなお話を聞く講演会を実施しました。
起業家にとって今なぜコロラドが熱いのか? FVCと同地のベンチャーキャピタルが展開する、国内企業の海外進出に役立つ新機軸とは? 講演内容からダイジェストとしてレポートします。

写真のキャプションが入ります写真のキャプションが入ります写真のキャプションフューチャーベンチャーキャピタル株式会社 代表・松本直人

本編に入る前に、まずは当日の登壇者とその背景を紹介します。
講演に先駆けて登壇したFVC代表・松本直人は、今、アメリカ・コロラド州には多くのベンチャー企業が集積していると、その注目度の高さを熱弁。自身も半年間で3度も足を運んでいるエピソードを披露し、国内企業の進出の地として非常に有望視していることを伝えました。

 

写真のキャプションが入ります写真のキャプションが入ります写真のキャプションRockies Venture Club エグゼクティブディレクター・Peter Adams氏

講演のメインスピーカーを務めたのが、冒頭で紹介したピーター氏です。ピーター氏は、RVCのエグゼクティブディレクターとして年間500件以上の企業評価や、投資先候補の発掘を行っています。加えて、起業家や投資家の教育事業にも携っており、まさに投資のエキスパートとして活躍中。

 

ピーター氏が在籍するRVCは、コロラド州最大のエンジェル投資ネットワーク。200人以上のエンジェル投資家(創業間もない企業に投資する個人投資家)が所属し、年間1,000 件の投資案件を審査しています。1,000件のうち投資家へのPRの場となる“ピッチ”に残れるのは85社、さらに“デューデリジェンス”(企業価値の精査)まで残れるのは24社程度と厳しく審査し、実際に投資が行われるのは年間15社程度です。

 

資金調達をした企業のExit(企業へ投資した資金の回収方法)といえばIPO(株式公開)を連想しますが、RVCは投資先のM&Aを目指して支援を行っており、その割合は98%にも上ります。シナジーを見込んで企業評価をした場合、IPO以上の価値で企業を売却できるケースも多く、RVC側も厳密に選定した企業を成功に導くサポートを行っています。

 

写真のキャプションが入ります写真のキャプションが入ります写真のキャプションFVC Americas 社長・大津賀伝市郎氏

ピーター氏とともにコロラドが注目すべき理由を語ったのが、FVCのアメリカ現地法人「FVC Americas」の社長であり、RVCのベンチャーコミュニティディレクターも務める大津賀伝市郎氏です。数少ない本格的な日本人エンジェル投資家であり、コロラド州フォートコリンズ市経済発展部の顧問や大学と企業との技術提携の橋渡しを務めるなど、自治体や教育機関への支援も行われています。

 

以上のメンバーが語った、起業家にとってのコロラドの魅力とは?

 

人材・情報・資金が集まり、起業に適した環境が揃うコロラド州

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大津賀氏によると、アメリカの起業率を都市ごとにランキングした結果、トップ10にはデンバー、フォートコリンズなどコロラド州のメイン5都市が全てランクインしているそう。コロラド州はベンチャーキャピタルの活動が非常に活発で、RVCは州都のデンバーだけでも、2015年に56社のスタートアップに約4億2000万ドルを出資しています。ピーター氏はその理由を「国内からスタートアップや人材が集まってくるため、投資案件が豊富で流れが活発であること。また支援するアクセラレーターも大勢揃っているから」と語りました。また、他州に比べて20~25%割安で投資できる点も見逃せません。シリコンバレーでは500万ドルかかるものがコロラドなら400万ドルですみ、可能な範囲で投資に参加することができるのです。

 

他にも、医療やエレクトロニクス、情報テクノロジーなど最先端の産業が多く集まり、イノベーションが起こりやすい環境も整っています。州政府が産官学の連携を促進するため組織の運営や、起業家への資金援助を行っているなど、コロラドの魅力が次々に挙げられました。現在も全米から1万3,000人がスタートアップのために集まっているとのことですが、それも納得の環境です。

 

コロラド州と日本国内起業家・企業・自治体とを結ぶ、3領域の取り組み

写真のキャプションが入ります写真のキャプションが入ります写真のキャプションフューチャーベンチャーキャピタル執行役員・藤永裕二氏(写真左)

今回の京都、東京の講演では、そのコロラド州を舞台に、FVCとRVCが協業する新サービスが、大津賀氏、ピーター氏とFVC執行役員の藤永裕二の3名から発表されました。

 

中心となるのが、起業家や事業開発者のピッチ能力やビジネスモデルの向上を支援する教育プログラム「RVC Hyper Accelerator」。従来なら12週間かかる学習内容を6日間で学べる短期集中型として提供されます。立ち上げの背景としてピーター氏は、「起業家は投資家の質問に答えられないばかりか、投資家の期待するところを理解できず、自身の思いを伝える語彙力も乏しい」と鋭い視点を披露。一方で、従来のアクセラレータープログラムでは「長期間で費用がかかるわりに効果が出ない」と厳しい評価を。

 

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その点、RVC Hyper Acceleratorではワークショップを主としたスタイルで、密度の濃い学習を実現できる仕組みが。1企業に対して10人のメンターをつけて毎日支援。受講者の足りない点に対して十分な理解を得るまで対処ができ、指導の中で投資家に対する知的かつ実践的な会話術も身に付きます。

 

ピーター氏は「まずはベースとなる企業ビジョンを作り、そこにマーケティング戦略やファイナンス戦略、Exit戦略など、手順を誤ることなく成長戦略を描くことが大切です」と語りました。2017年2月には、2日間にまとめたプログラムを日本で開催する予定もあるそうです。

 

写真のキャプションが入ります写真のキャプションが入ります写真のキャプション

藤永からはまず、FVCの海外戦略の説明がありました。現在、FVCでは日本、アメリカ、インドを中心とした世界約2,300社のベンチャー企業の情報を、各機関から収集しています。割合的にアメリカの情報は非常に多く、藤永はその中でもコロラド州には優良なベンチャー情報が集まると力説。「ベンチャーキャピタルからの投資が年間4兆8,000億円あり、エンジェルからの投資額も2兆3000億円、合わせて年間7兆円もの規模で投資が行われているので、業種に関わらず豊富な企業情報が収集できます。Googleなど世界的に有名な企業の進出も目立ち、スタートアップ用のインキュベーション施設も整っています」と、海外ビジネスの足掛かりとしても非常に魅力的、そして有効なロケーションだと呼びかけました。

 

写真のキャプションが入ります写真のキャプションが入ります写真のキャプション会場では、RVCがコロラド州で開催したピッチイベントの映像も流された。新サービスでは、ピッチや起業家と現地投資家との質疑応答などが同時通訳付きでストリーミン配信される予定。

また先述した「RVC Hyper Accelerator」をはじめとしたRVCとの連携についても詳細な説明がありました。今後はEDUCATION、INNOVATION、INVESTMENTの3つの領域を軸にサービスを展開すると発表。「RVC Hyper Accelerator」はずばりEDUCATION領域の軸として、「起業家向け」と「企業向け」の2コースを設ける予定だそう。

 

INVESTMENT領域においては、アメリカ国内のベンチャー企業に対する投資サポートに取り組むことを宣言。RVCが現地で開催しているピッチイベントをストリーミング配信し、国内にいながらアメリカの投資先候補を探せるようになるとのこと。投資先候補の企業評価や投資決定までのステップについても、手厚いサポートが行われる予定です。

 

INNOVATION領域については、地方でのファンド組成や、地域創業を支援してきたというFVCの強みを活かし、日本の地方とコロラド州のビジネスの橋渡しをするという構想を描かれています。地方企業や地方ファンドは、地域の市場規模によって技術の提携先や投資先が限られるという課題を抱えていますが、その進出先としてコロラド州を中心にアメリカの大きな市場を視野に入れられるようになります。自治体にとっては、起業率の向上や地域ファンドの活用といった大きなメリットがあります。そのためには、自治体もベンチャー企業やアメリカの投資トレンドについて理解を深めていく必要があり、EDUCATION領域でのサービス提供とのシナジーが期待されます。

 

海外進出が加速化する、日本の学生ベンチャー

写真のキャプションが入ります写真のキャプションが入ります写真のキャプション東京大学TLO代表・山本 貴史氏(写真左)

東京での講演では、紹介したメンバーに加え、東京大学TLO代表取締役社長・山本貴史氏が登壇。「日本発の技術を、海外の投資マネーやジョイントベンチャーの設立などで成長させる」ことをテーマに大学と企業との技術提携について、国内・国外の事情を交えながらスピーチされました。

 

山本氏が運営するTLO(Technology Licensing Organization、技術移転機関)とは、東京大学で発明された技術の企業提携・ライセンス取得を推進する企業です。山本氏は「全世界において大学発のベンチャー企業は、一般のベンチャー企業に比べて生存率がはるかに高く、倒産率が低い」と、見逃せない事実を紹介。最近では産学連携がGDPに影響を与えるとさえ言われているそうです。日本における大学発の技術ライセンス取得の推移は、2011年の1,500件から年々、2,200件、2,400件、2,800件と右肩上がりに伸びており、アメリカの産学連携研究者の中には「日本の勢いは、世界トップのアメリカに追いつく」という声も上がっているそうです。

 

ただ国内企業は、大学発の革新的な技術に対する理解が足りないという現実も。アメリカでは、大学発の技術の50%以上が中小企業やベンチャー企業とライセンス契約が結ばれる一方で、日本国内での割合は1%にも満たないという最新データが出ています。そのため国内大学発の技術が海外で特許取得をしていたり、海外企業から投資を受け現地で起業するケースが増加傾向にあり、山本氏は「技術には国境がないので、技術の移転先は国内に限られているわけではありません。大学発ベンチャー企業がコロラド州で起業することも決して不可能ではありません」と熱弁。FVCやRVCとの連携によって、学生起業家の海外での活躍の可能性も広がると示唆しました。

 

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講演会後、ピーター氏からアメリカ・コロラド州への進出を考える起業家や投資家に向け、

 

「This is an exciting time for Japan and Colorado to work together ,and there are many opportunities for both large corporations to focus on innovation and for startups to learn new way to grow collaborate.(日本とコロラドとが協力し合うエキサイティングな時が来ています。イノベーションに注目する大企業と成功を求めるスタートアップが出会い、ともに成長する機会がたくさんあります)」

 

とのコメントをいただきました。


 

スタートアップビジネスにおいて今、最も注目すべき都市・コロラド。FVCはコロラドを拠点とするRVCと、国内外のベンチャーキャピタル市場をより活性化させるためのプロジェクトを予定しています。今後の情報にも、ぜひご注目を。

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竹田 亮子 / Takeda Ryoko

フリーライター

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